「スーパータイガー事件」
1980年代、ファミコンブームの頃、ファミリーコンピュータマガジン(通称ファミマガ)という雑誌が人気でした。
当時は高橋名人の登場もあってシューティングゲームが隆盛を極めていた頃で、ゲームをクリアすることよりも高得点を取ることがひとつのステイタスでした。
このファミマガという雑誌内に、高得点を取った際の画面写真を送り、その月で一番の高得点を取った人物にはプレゼント(現金だったか?)を送る「ハイスコアルーム」というコーナーがありました。
そこで、活躍していたのがペンネーム「スーパータイガー」という人物で、数多くのゲームでハイスコアを連発し、賞を受けていました。
しかし、ある日、読者から「得点の表示がおかしい」という指摘が編集部に届きました。
得点の最小単位が100点であるゲームで、99点というような表記の数字があることがおかしいという指摘でした。
編集部が追及したところ、このスーパータイガーは罪を認め、謝罪したとのこと。
この人物はパソコンを使って得点画面を偽造し、しかもバレにくいよう写真の端をカットして編集部に送っていました。
当時の編集者が誌面にて「国立市のY、おまえのことだよ!」と強い論調で非難していたのを覚えています。
結果、このコーナーはしばらくして消滅しました。
他の雑誌でも似たようなコーナーがありましたが、パソコンを使ってプログラムを改造してまで投稿してくるマニアがいたそうで、どの雑誌でもハイスコアを競うページは消えて行きました。
折しも、時代はシューティングゲームからドラクエの登場によるロールプレイングゲームの時代に入ろうとしており、これも時代の流れと言えたのかもしれません。
「水晶の龍・野球拳事件」
こちらは事件というほどのものではありませんが、当時、ゲームの世界では「ある特殊な条件を達成すれば、どこかに何かが現れる」「とあるコマンドを入力してからゲームを始めれば、自機が無敵になる」などという「裏技」というものが流行していました。
裏技という言葉の起源は高橋名人と言われています。
「ロードランナー」というゲーム内にあったバグを「裏技」と呼んで誤魔化した(?)のが始まりです。
ファミマガにも裏技ばかりを扱ったコーナーがありました。
裏技といっても、意図的に仕込まれたものからバグを逆手に取ったものなど色々ありました。
段々ネタが尽きてきたのをきっかけに、ファミマガ編集部が「裏技」コーナー内に「ウソ技(ウソテク)」という、実は実現できない技をひとつ混ぜて、読者に当てさせようという企画を始めました。
その中でも、当時の子どもたちやマニアを興奮させたのが「水晶の龍」というスクウェア社(当時)が「DOG」というブランド名(スクウェアがパソコンゲームメーカーと共同開発したゲームに付けられたブランド名)で発売したゲームにて、ヒロインの美少女シンシアと、ある条件を充たすと野球拳ができるというウソ技です。
ウソ技だとなんとなくわかっていながらも、スケベ心を抑えられず検証する人間が続出しました(ゲームの売上が伸びたという説もありますが、真偽は不明です)。
小学生でも見る雑誌だったので、肝心の部分は見えないようになっていましたが、巧妙に作られた画面写真でした。
また漫画家、佐藤元さんによって描かれたシンシアが美少女だったことも検証に拍車をかけました。
後におそらくそのとき悔しい思いをしたであろう人間によって、パソコンのFLASH機能を使ってこのときの野球拳を再現したゲームが作られ、その画像は今も下記の通り、「youtube」などで見ることができます。