節分には豆をまかれて追いやられる鬼。
昔話の「桃太郎」などでは悪役であり、災いをもたらすような存在として嫌われていますが、実態は……
そんな鬼に関する雑学を紹介します。
鬼の肌の色について
赤鬼、青鬼……という具合に色とりどりの鬼がいますが、これは五行思想や仏教の思想と結びつき、煩悩の種類を表しています。
赤鬼・・・貪欲、欲望
青鬼・・・怒り、憎しみ
黄鬼・・・浮ついた心、おごりたかぶり
緑鬼・・・怠惰
黒鬼・・・疑う心、不平不満、愚痴
この中でも赤鬼があらゆる悪意の大元となる欲望を表すことから、代表的存在となっています。
なぜ、金棒を持っているのか?
鬼といえば、トゲのついた鉄製の金棒を持っている形でよく登場します。
恐ろしい存在だからとも言えますが、実は鬼は製鉄民を表しているという説があります。
古代の日本に存在した「たたら製鉄」に従事していた人々です。
アニメ映画「千と千尋の神隠し」にも登場していますね。
製鉄民だから当然、金属製の道具を持っているわけです。
肌が赤いのも製鉄に必要な水銀を表しており、青い肌については、砂鉄を表しています。
製鉄民たちは水銀は鉱石が赤いので「赤」「朱」などと呼んでいました。
砂鉄は海で取られることから「青」と呼んでいました。
なぜ、鬼は角を生やし、虎柄の衣装を着ているのか?
鬼の外見といえば、牛のような角を生やし、虎柄の衣装を身に着けていることが連想されると思います。
これにも意味があります。
「鬼門」という言葉をご存知ですか?
北東の方角を表します。
こちらから災いがやってくると言われる不吉な方角です。
京都の北東に比叡山延暦寺があるのは鬼門からやってくる災いを防ぐためとも言われています。
なぜ北東が嫌われるのかは冬場に吹く北東の風で命を失う人が多かったからとか、京都に住んでいた貴族たちにとって、東の方角にいた自分たちに従わない人々が怖かったからなどという説があります。
この北東の方角は昔、「丑寅(うしとら)の方角」と呼ばれていました。
なので恐ろしい存在である鬼に牛のような角があり、虎柄の衣装を着ているように描かれたのです。
昔話の「桃太郎」では主人公は犬・猿・雉をお供に鬼退治に行きますが、これは丑寅の方角と反対側になる「裏鬼門」に当たるのが、申・酉・戌の方角だからです。
ちなみに工事現場や電柱で見られる黄色と黒の縞模様ですが、あれは鬼と雷様が結びついてできた模様です。
雷様も鬼と似たような外見ですよね?
「オニヤンマ」という大きなトンボは黒と黄色の縞模様で、別名「電気ヤンマ」とも言いますが、名前の由来は鬼と雷様からです。
なぜ、豆をぶつけられるのか?
豆は「魔滅」とも書けるため、恐ろしい存在である鬼にぶつけられるのに適切なものとされました。
五穀の中で一番硬いものだからという説もあります。
節分の豆まきについては平安時代にあった「追儺(ついな)」という鬼を追い出す宮中の行事が起源とされています。
元は大晦日に行われていた行事ですが、室町時代くらいから立春の節分にのみ行われるようになりました。
結局、鬼とは何?
「鬼」という漢字は中国で死体を表す象形文字が起源で、幽霊や亡霊といった意味で使われます。
幽霊ですから、姿のはっきり見えない恐ろしい存在というわけです。
「魂」という漢字にも「鬼」という漢字が含まれていますね。
この文字が日本で「おに」と呼ばれるようになったのは「隠(おぬ)」という言葉が語源と言われています。
元は存在は見えないけども、いるように感じる「地霊」のようなものを表していたとされています。
昔は病気や雷なども霊による祟りではないかと見られていましたし。
この「おぬ」が仏教思想の影響で地獄にいる鬼とも結びつきました。
「鬼=恐ろしいもの」という形となり、貴族たちから見て恐ろしい存在、つまり先述した製鉄民などともさらに結びつきました。
貴族たちは自分たちに従わない人々を「土蜘蛛」「河童」「狐」などと読んだわけですが、鬼もその一種といえます。
もしかすると、鬼は我々一般庶民の先祖だったのかもしれません。
なので、一部地方では神のような存在として祀られていることもあります。
ちなみに鬼退治で知られる渡辺綱や坂田金時(金太郎)にちなんで、渡辺姓や坂田姓を鬼は嫌うとされ、この名字の人は豆まきをしなくても大丈夫などと言われてもいます。
外見から外国人を表しているという説もあります。
要は、姿が見えるもの(自分たちに理解できない存在)でも、見えないもの(霊的なもの、心の中にある欲望など)でも恐ろしいものを表す総合的な存在として「鬼」という言葉はあると言っていいでしょう。
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