ドルアーガの塔|ギル・ドルアーガ・カイのモデルはバビロニア・メソポタミア神話の神々だった

地理・歴史系
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1984年にナムコが開発し、ゲームセンターとファミコンで一世を風靡した名作アクションRPG「ドルアーガの塔」。60階建ての塔を攻略する高難易度のゲームとして、当時のゲーマーたちを熱狂させました。

この作品には、古代バビロニア・メソポタミア神話の神々や英雄が登場キャラクターのモデルとして使われています。ギルガメッシュ、イシュタル、ドゥルガー——神話を知ればゲームの世界観がより深く楽しめます。

この記事では、主人公ギル・ラスボスのドルアーガ・ヒロインのカイ・女神イシターそれぞれのモデルとなった神話の存在を、背景情報も交えながら詳しく解説します。

「ドルアーガの塔」基本情報——どんなゲーム?

「ドルアーガの塔」は1984年にナムコがアーケード向けに開発し、後にファミコンをはじめ多数のハードに移植された作品です。開発者は「ゼビウス」でも知られる遠藤雅伸氏

「バビロニアン・キャッスル・サーガ」と呼ばれるシリーズの第一作であり、続編・スピンオフとして「イシターの復活」「カイの冒険」なども発売されています。

ゲームの目的は、主人公のギルが60階建ての塔を制覇し、以下の3つを達成することです。

  • 悪魔ドルアーガを倒す
  • 王国の力の源ブルークリスタルロッドを取り返す
  • 石にされた巫女カイを救い出す

このゲームの最大の特徴にして最大の難所が、各フロアに隠されたアイテムの出現条件です。特定の行動をしないとアイテムが出現せず、しかもその条件はゲーム内では一切説明されません。当時は攻略本や口コミが必須であり、「情報を共有してクリアを目指す」という文化を生み出した草分け的な作品でもあります。

ギル(ギルガメッシュ)——古代メソポタミア最古の英雄王

黄金の鎧をまとった本作の主人公。バビリム王国の王子という設定です。

モデルとなったのは、古代メソポタミアの都市国家ウルクの王ギルガメッシュです。紀元前2600年頃の実在が疑われる人物であり、世界最古の文学作品のひとつ「ギルガメッシュ叙事詩」の主人公としても知られています。

ギルガメッシュの神話エピソード

ギルガメッシュは母が女神という半神半人の存在です。圧倒的な能力ゆえに当初は暴君として振る舞っていましたが、最高神アヌがそれを見かね、対抗馬としてエンキドゥという同等の力を持つ存在を創造します。

ふたりは激しく戦い引き分け、その後は無二の親友となります。共に森の怪物フンババを倒し(その際200キロ超の武器を使ったという記述も)、天の牡牛をも撃退しました。

しかし、ふたりの力が神をも脅かすほどになったことを恐れた神々によって、エンキドゥは命を奪われてしまいます。親友の死をきっかけに自らの死を意識したギルガメッシュは不老不死を求めて旅に出ますが、結局それは叶わず、最期を迎えます。死後は冥界の王となったという伝説も残っています。

雑学:「ギルガメッシュないと」の語源
テレビ東京系で放映されたお色気深夜番組「ギルガメッシュないと」のタイトルは、ギルガメッシュ王が叙事詩の中で描かれた精力絶倫なイメージにちなんでいます。

ドルアーガ——インド神話の破壊女神がモデル

8本の腕と4本の脚を持ち、緑色の鱗に包まれた本作のラスボス。見た目のインパクトが強烈な悪魔です。

モデルとなったのは、インド神話に登場するドゥルガーおよびカーリーとされています。どちらも多数の腕を持ち、それぞれの手に武器を携えた破壊の女神です。ドルアーガの異形の姿はここから来ています。

ドゥルガーとカーリーの関係

ドゥルガーは決して悪神ではありません。天界が敵に奪われたとき、その奪還に力を発揮した守護神的な存在であり、今もインド各地で篤く信仰されています。ヒンドゥー教以前からインドで崇拝されていた神ではないかという説が有力です。

カーリーはドゥルガーから生まれた女神で、ドゥルガーの純粋な破壊的側面だけが具現化した存在とされています。両者ともヒンドゥー教の最高神のひとりシヴァの妻、あるいはその化身とされています。

ゲームでは「悪魔」として描かれているドルアーガですが、モデルになった神々は本来、守護と破壊の両面を持つ複雑な存在なのです。

カイ——シュメール神話の大地の女神

主人公ギルの恋人であり、国の巫女でもあるヒロイン。ドルアーガからブルークリスタルロッドを取り返そうと塔に乗り込み、石にされてしまいます。スピンオフ「カイの冒険」では彼女自身が主人公となります。

カイのモデルはシュメール神話に登場する大地の女神「キ(KI)」です。「キ」では呼びにくいため、ゲームでは「カイ」と読ませたと考えられています。

キは天を司る神アン(メソポタミア神話ではアヌ)の妻であり、ふたりの間には多くの神々が生まれたとされています。ギリシャ神話においてゼウスの妻ヘラのイメージに影響を与えたという説もあります。

ゲーム内でギルの妻(恋人)という立場のカイが、神話の天神アヌの妻・キをモデルにしているのは、設定として非常に整合的です。

イシター——愛と戦争と破壊を司る多面的な女神

ゲームの中でギルとカイを見守る女神として登場するイシター。スピンオフ「イシターの復活」ではタイトルになるほど重要な存在です。

モデルは古代メソポタミアで信仰された女神イシュタルです。愛・生殖・豊穣・戦争・破壊・金星など、非常に多くの神性を持つ複合的な女神であり、シュメールの女神イナンナをはじめ複数の女神が習合されたものとされています。

イシュタルとギルガメッシュの因縁

「ギルガメッシュ叙事詩」にはイシュタルも登場し、ギルガメッシュに愛人になることを求めます。しかしギルガメッシュは、イシュタルが飽きた男に残酷な仕打ちをしてきた過去を知っていたため、これを断ります。

屈辱を受けたイシュタルは父アヌに頼んで天の牡牛を送り込みますが、ギルガメッシュとエンキドゥに倒されてしまいます。この件がきっかけで神々がエンキドゥを殺すことになり、間接的にギルガメッシュの悲劇の引き金となった存在でもあります。

イシュタルがヴィーナスと悪魔の両方の語源に?

イシュタルは金星を象徴する女神でもあることから、ギリシャ神話のアフロディーテ(ヴィーナス)に影響を与えたとされています。

一方で、キリスト教世界に登場する悪魔アスタロトの語源もイシュタルという説があります。一神教の観点では、異教の神は悪魔として描かれることが多く、強大な女神イシュタルも例外ではありませんでした。愛の女神でありながら悪魔の語源にもなるという二面性が、イシュタルという存在の奥深さを表しています。

登場キャラクターとモデルの対応表

ゲームのキャラクター モデルとなった神話の存在 出典
ギル(主人公) ギルガメッシュ(英雄王) メソポタミア神話
ドルアーガ(ラスボス) ドゥルガー/カーリー(破壊の女神) インド神話
カイ(ヒロイン) キ(大地の女神) シュメール神話
イシター(守護女神) イシュタル(愛と戦争の女神) メソポタミア神話

まとめ

「ドルアーガの塔」の登場キャラクターは、古代メソポタミア・シュメール・インドの神話体系から巧みに引用されています。開発者の遠藤雅伸氏が神話の世界を深く研究したことが、ゲームの世界観の厚みに繋がっています。

  • ギル=ギルガメッシュ(世界最古の文学の主人公にして英雄王)
  • ドルアーガ=ドゥルガー/カーリー(インド神話の多腕の破壊女神)
  • カイ=キ(シュメール神話の大地の女神、天神アヌの妻)
  • イシター=イシュタル(愛・戦争・金星を司るメソポタミアの大女神)

ゲームと神話はどちらを先に知っても楽しめます。「ドルアーガの塔」を入口にメソポタミア神話の世界へ踏み込んでみると、ゲームの奥に広がるもうひとつの物語が見えてくるはずです。

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