夜11時台の放送時間ながら高視聴率を叩き出す、関西の名物番組「探偵ナイトスクープ」。
「複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れる」が売り文句の”娯楽番組”です。
視聴者からの素朴な、時には馬鹿馬鹿しいと思われるような疑問をタレントたちが探偵となって、各地を訪ねて調べるのが基本です。
調査の結果完成した「全国アホ・バカ分布図」などは学術的な賞まで取っている番組でもあります。
初代局長は上岡龍太郎
この番組の初代探偵局長は上岡龍太郎氏ですが、この上岡局長自身が探偵に挑戦した回が存在します。
初期の頃、この番組は社会派のネタも結構取り扱っていていました。
上岡龍太郎氏が探偵役に扮したのは、1988年5月7日に放送された「国道一号線・違法駐車の謎」という回です。
上岡氏が調査した内容は「国道一号線の違法駐車はひどいが、どうして警察は放置したままなのか?」という内容でした。
放送中、タクシー運転手に警察官が注意している場面がありますが、上岡氏がタクシー運転手に対し「いつもこんな感じなんですか?」と尋ねたところ、タクシー運転手は「いやー……」とお茶を濁すような回答。
すると上岡氏は警察官に対して「あなた嘘をつきましたね!」としつこく追及。
警察官がタジタジとなっていました。
さらには「皆さん、ここに停めても見逃してくれますよ!」と大声で叫ぶ場面も。
ロケをしていると、探偵役のタレントたちが警察から職務質問を受けることがたくさんあったそうです。
この件以来「朝日放送のロケです」と言うと、「ナイトスクープか!」と警察官から言われる回数が増えたと当時探偵のひとりだった北野誠氏が語っています。
上岡氏が激怒して途中で帰った回も
なお、ナイトスクープには上岡氏が激怒して途中で退席した回もあります。
幽霊がどうこうという依頼に対して、オチに霊媒師を呼んでお祓いをしてもらうという内容でした。
母親が病気のとき、怪しげな祈祷師などに食い物にされた経験がある上岡氏は、この手の輩が大嫌いであり、我慢できませんでした。
そのため、「ディレクターは誰だ!」「幽霊がいるというなら証明してみろ!」などと激怒。
最後は席を立ち、スタジオから消えました。
なお、次の回(同じ日の収録)の最初の場面で照れくさそうに復帰するシーンが残されています。
このとき、二代目の秘書である岡部まりさんは、番組収録前に今日は大阪に泊まるのか、最終の新幹線で東京に帰るのかを上岡氏に尋ねられていたと後に語っておられます。
当日は泊まりの日だったそうで、つまり収録時間を気にせずキレられるなと計算されていたわけですね。
岡部さんは「観客たちも騒然としていましたが、何か喜んでいる雰囲気だった」とも語っておられます。
また、初期の頃、女性探偵が何人かいましたが、上岡氏が激怒し全員クビになっています。
主な理由は彼女たちが基本的な知識を持っていないことでした。
その後、女性探偵はレギュラーでは存在していません。
ただし、当時探偵のひとりだった立原啓裕が病気のときに、奥さんが代理で探偵を務めたことなどはあります。
探偵ナイトスクープに関する余談
上岡龍太郎氏については、学生時代の映像が流れたこともあります。
依頼者は上岡龍太郎氏自身で、中学生時代にとある番組が学校に取材に来たことがあるから探せ、という依頼内容でした。
番組は発見され、若き日の上岡龍太郎氏の姿が映っていました。
なお、この番組の最高顧問はキダ・タロー氏が自称していますが、特別顧問については横山ノック氏が自称しています。
2019年追記・最近のナイトスクープは面白くない?
元探偵の桂小枝氏が「最近のナイトスクープはおもしろくない」という主旨の内容をツイッターで発言して話題となりました。
確かに以前と比べて、いい話に終わるような内容ばかりで、毒気や実験的な面白さが減ったように思います。
個人的には探偵役のタレントの質が落ちたように思っています。
北野誠、槍魔栗三助(生瀬勝久)、立原啓裕、越前屋俵太、桂小枝らの頃に比べると今のメンバーは……
北野誠は当時、中途半端に終わる内容の調査が多く、最高顧問のキダ・タロー氏によくなじられていたのを思い出しました。
そこにはプロレス的な面白さがありました。
2019.10.31追記・三代目局長決まる
西田敏行局長が退任することになり、三代目局長として松本人志氏が就任すると発表されました。
2023.6追記・上岡龍太郎氏亡くなる
2023年5月中に芸能界を2000年に引退していた上岡龍太郎氏が間質性肺炎により、81歳で亡くなっていたことが公表されました。
追悼番組がいくつか作られ、この記事の冒頭にある上岡氏が警察官を直撃する回も放送されました。
ご冥福をお祈りします。